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認知症介護

2016年4月11日放送の「あさイチ」で「認知症介護」がとりあげられました。

話す・見る・触れるの「ユマニチュード」や症状の回復につながるケアのコツ。
分析から見えてきた認知症ケアについて紹介!

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話す・見る・触れるの「ユマニチュード」

進化する人工知能のノウハウが、介護の現場に生かされ始めています。

脳科学や情報学の視点から分析するとついやりがちな失敗が明らかに。
分析の結果をもとに介護のプロがノウハウを伝授。

番組に介護の悩みを寄せてくれた川田さん。
5年前から1人で母親の介護をしています。
80歳の母親。

アルツハイマー型の認知症と診断されて以来、特に記憶の障害が目立ち
過去と現在が混乱してしまいます。

部屋の中にカメラを設置させてもらい、ふだんの介護を記録させていただきました。

アルツハイマー型認知症の母親は、短期記憶が苦手で、
何度も同じことを聞いてきます。

介護する川田さんは、その度にいらだち、
きつく当たってしまうことに悩んでいました。

こうした状況の解決策は見つかるのか。
訪れたのは静岡大学の情報学の専門家竹林洋一さんのもとへ。

専門は、どんな刺激で人の感情が生まれるのかという研究。
そこから、認知症の人を穏やかにする介護のしかたを導き出そうとしています。

川田さんの介護の様子を分析してもらい
うまくいかない理由が明らかになりました。

ポイントは、「話す」。
注目したのは「否定」。

1分間に1回の頻度で否定のことばが出ていることが分かりました。

脳の機能が低下している認知症の人にとって、
「否定」の言葉のようなネガティブな刺激は、健常な人よりも強く悪影響を及ぼします。

支離滅裂な会話をなんとか止めようとして発してしまっていた言葉が、
介護をうまくいかなくさせている原因だったのです。

川田さんの介護についてどんな観点で分析したのかというと、
「話す」「見る」「触れる」の3つ。

以前「あさイチ」でも伝えたユマニチュードで大切になってくる3つの観点です。
これをすることで周辺症状が改善するといわれています。


分析結果をもとに、改善点をアドバイスするため、
ユマニチュードのエキスパートたちが女性宅を訪れました。

考案者のフランス人イヴ・ジネストさんとユマニチュードを
日本に紹介した医師・本田美和子さんです。

問題が明らかになった「話す」ことについて、
ユマニチュードの考案者であるフランス人のイヴ・ジネストさんは
「ポジティブな言葉で」
意思の疎通がうまくいかないときは、
「好きな物・関心の高いものに関連づけて話題を転換する」
というポイントを伝えました。

見せてくれたのは家庭向けにやり方を示した動画。
川田さんの家と似た状況の例です。

記憶が短時間しかもたないために起きてしまう問題。

【悪い例】
父「今何時?」
娘「今、10時半。」
父「今何時?」
娘「今。10時半。」
父「今何時?」
娘「お父さん何?もう10回ぐらいいってるんだよ!」

川田さんは、まさしくこれ!と同感しています。

【良い例】
父「今何時?」
娘「お父さんありがとう、教えてくれて。
10時半でいつものお茶の時間だった。
今から一緒のお茶の準備しようか。」

この場合の解決策は
否定するのではなく相手の好きなものに関連づけて別の話題に展開します。

テクニックを教わりいよいよ実践です。

川田さんのお母さんです。

初めて出会った外国人の男性に一気に興奮状態。

イヴさんがコミュニケーションの取り方を伝授します。
会話の基本は、ポジティブなことばを積み重ねること。

さらにポイントとなるのが近い距離で視線を合わせ、
優しく触れながら会話を行うことです。

お母さんは記憶の混乱を起こすことなく終始受け答えも、はっきり。

しかし、思わぬハプニングが。
お茶菓子を投げました。

普通なら、怒ってしまいそうな場面ですが、看護師の林さんは
否定をせず、投げるという動作に関連づけて豆まきの話題に展開しました。
すると、その後も穏やかな様子でした。

およそ2時間の関わりが終わり、お別れです。

母親に寄り添う川田さんの行動にも変化が見られました。
お母さんの体に優しく触れ、しっかり目を見てことばをかけます。

本当に数時間で大きな変化がありました。

柳澤アナ「対応のしかたによって、物を投げることは繰り返さなくなっていくんですか。」

瀬田アナ「あのときはなくなりました。

むしろ豆まきの話に夢中になって、あのあとも会話としては、
ここにいるみんなでやろうという話になって、
またおいでというふうに会話が発展していきました。
投げる動作自体がなくなりました。」

鍵になった分析に当たったのが、静岡大学の情報学が専門の竹林洋一さんです。

瀬田アナ「竹林さん、ユマニチュードはいいと言われていたものの、
あえて別の分野である情報学が専門の竹林さんたちが分析をするということで
新しくどんなことが分かったんですか?」

竹林さん「ユマニチュードは一部の専門家ではすごくいいと分かっていました。
ところが介護の現場というのはいろいろあって医師だったり看護師だったり家庭でやっている方、悩まれたりいろいろしているわけですね。

ユマニチュードがなぜいいかということのデータを蓄積して、
上手に人工知能や映像技術を使って分析することによってなぜいいか、
どんなことをやればいいかということそういうことがだんだん分かってきました。

情報学があればユマニチュードを多くの人に広めることもできます。」

井ノ原「人工知能とは何ですか?」

竹林さん「人工知能は例えば、認知症の頭でどんなことが起こっているのか
どんなふうにコミュニケーションを取ればいいのか、
ロボットがただできるだけではないんですね。

介護のことですよね。どうやってコミュニケーションを取ればいいかということ、
そういう技術を人工知能で私たちが分析しています。」

瀬田アナ「ヒントとなるエッセンスを人工知能を使って導き出して、
それを伝えようとしてくれています。

竹林さんにも協力してもらった情報をもとに川田さん親子の生活が
どのように変わったのかご覧ください。」

1週間後、再び川田さんを訪ねました。

お母さんも元気に迎えてくれました。

しかし、会話をしているとやはり記憶の混乱が起きます。
春子さんが小さかったときの記憶と混乱し、急に心配し始めました。

以前なら否定を重ねていたところですが…。
子どものころに、おひなさまを飾った記憶に関連づけて話題の転換を図りました。

スタッフ「話題を変えるのうまいですね。」

川田さん「話題を最初は見つけなきゃとか探さなきゃとか思ったんです。
すごい作業だと思っていたけれど、見たままでいえばいい。
“今日の髪の毛すごくかわいいね”とか“この手、すごくありがとうだよね”というと“へへへ”みたいな反応をしてくれる。」

実践する中で、関わり方そのものにも変化が生まれたといいます。

お母さんはもちろんなんですが、川田さん自身の表情もより明るくなったようです。

さらに体調面でもこの関わりがいい方向に動いていて、
お母さんが腹痛を訴えることが多かったそうです。

けれども、ユマニチュードの“よく見る”ということをしていたら
だんだんこれが原因かもということが分かって、
例えば食事でりんごのすりおろしを入れたり、
ヨーグルトを一緒にだしたりすることで改善されて、
腹痛もなくなって、お互いに幸せになった部分がすでに出ているということです。

話すに関しては否定、命令はNGのほかにも低めのトーンでゆっくり
というポイントがあります。
見るということも重要です。
20cm以内、正面から長く0.5秒以上も重要です。

触れるということも重要です。
離陸着陸のイメージ、つかまない、ウデ・肩・背中から

このポイントをうまく組み合わせるといいユマニチュードができるんですが、
これだけ見ても分からないと思うのできょうはスペシャルなゲストをお呼びしています。

実際に川田さんにユマニチュードを教えてくださった林さんです。
林さんにはユマニチュードのさまざまなポイントを実践で見せていただきます。

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ユマニチュードのさまざまなポイントを実践

林さん「まずこちらのポイントを行う前に1つやることがあります。
必ず3回ゆっくり大きな音でノックをすることです。

ふだん私たちは遠くからお父さん、きょうはごはん何にする?
と話しかけてしまうことがあると思うんですけど、話しかけているということが
認識できないのが認知症の方なんです。

ノックをすることで、これからあなたにお話をしますよという合図にすることができます。
ノックをします。
そうしましたら必ず相手の方の正面に立ちます。
近くですといきなり近づいてびっくりしてしまいますので、
少し距離をとってから近づきます。

近づくときにまっすぐ近づいていくと目線の高さが上になってしまって
少し威圧的な感じになってしまいます。

近づくときは少し目線の高さを相手に合わせてから、
ゆっくりそして大げさなほどの笑顔で近づきます。

相手の方と目が合います。
認知症の方は、すごく近くで見ることで認識してもらうことができます。

通常ですとこの距離は少し近いですけれども、
認知症の方は20cmぐらいまで近づくとしっかり認識してもらいます。

目が合いますと、ただ見てるとなんで見られているのかなと不安になりますので、
そこでお話だけをします。

「お父さん、きょうも一緒にいてくれてうれしいです、ありがとう。」

ふだん思っていても、家族ですとなかなかことばにできないこと
介護にすごく困っている場合は言えない場合、思えない場合もあると思います。

ただ、ことばにすることでそれが相手に伝わるので、
それも1つの技術として伝えます。

お話かけをしましたら触れます。

触れる以外にも私はあなたのところにいますよと伝えます。

触れるときにポンと触れてしまうと温かみが伝わらないんですが、
指先からまるで飛行機が着陸するときのようにゆっくり指先から触れて、
手のひら全体で重みをかけて私の体温と相手の方の体温が行き来するような感じで
安心感を伝えることができます。

お別れするときには手のひらから指先、飛行機が離陸するようにゆっくり
名残惜しく本当は行きたくないんですけれども今は少し離れます、
というようなことを伝えることで優しさを伝えることができます。」

【マニチュード】
話す→否定、命令はNG/低めのトーン/ゆっくり

見る→20cm以内/正面から/長く0.5秒以上

触れる→離陸着陸のイメージ/つかまない/腕・肩・背中から

続いては環境のデータ分析で新たなことが分かってきました。

利用しているお年寄りの方が元気になる介護施設について静岡大学で分析を進めていて
家庭でも応用できる知恵が新たに見つかってきています。

訪れたのは神奈川県藤沢市にある介護施設。

25人の認知症の人が利用しています。
認知症を悪化させないために体を動かす工夫が詰まっています。

工夫その1は、家具の置き方。
手すりはつけず、高さの異なるテーブルやソファーいすなどが所狭しと並んでいて、
物につかまって歩けるようにしています。

また、家具の高さもポイント。
こだわりはソファー。
あえて低めのものを使って、立つときに意識しなくても筋力を使うことを意識した場所づくり。

随所に体を動かす仕組みを取り入れることで自立して生活するための機能を維持できます。

こうした工夫で要介護度が12人は現状維持5人は改善。
中には4から1に下がった人もいました。

驚くべきこの成果。
静岡大学で分析した結果、施設の家具には配置だけではなくもう1つ、秘密がありました。

ポイントは、部屋の中にあえて置かれた畳や古い家具。
利用者から譲り受けた嫁入り道具のたんすなどもあります。

なじみの深いものが視界に入ること自体が脳にいい効果をもたらすことが分かってきたんです。

昔から知っているものや好きなものを見ると脳は快適と判断します。

すると、いわゆる幸せホルモンが分泌。

これによって、表情は明るく意識が活性化し行動する意欲も高まるのです。

仮に捨ててしまって引っ越していたとしても、
その方の記憶が残っている音楽や映像を見せるだけでも効果が得られるということでした。


お医者さんへの伝え方

今度は情報をお医者さんにどのように伝えていくのかということです。
データ分析で分かった医師への情報の伝え方です。

医師に相談するには様々な情報が必要になります。

まずは結婚や仕事のことなどの個人史。
症状は具体的にいつから始まったとかどの時間帯なのかという情報も含めた症状。
病歴。大きな病気や手術をしていないかそして薬や飲酒歴。
こういった幅広い情報が必要です。

この医師への伝え方は、
竹林さんたちが情報を集めてまさにデータベース化しようと取り組みを進めています。

実際にはインターネット上で誰でも見ることができる形に公開する準備を
今、進めているとのことです。

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